先付 SAKIZUKE
じゅん菜と紫雲丹
秋田のじゅん菜に、淡路の紫雲丹。出汁のジュレを薄くまとわせる。夏の始まりを告げる、冷たい一皿。
銀座六丁目・おまかせのみ
一日二回転 17:30/20:30
おしながき
「魚が決める。
私は、従うだけです。」
十九で包丁を握り、京橋、赤坂の鮨店で二十七年。飯炊きと追い回しから始めて、シャリを任されるまでに八年かかった。早いとも、遅いとも思わない。
令和六年、銀座六丁目の地下に八席の店を構えた。看板は小さく、品書きはない。あるのは、その日の魚と、それに向き合う仕事だけ。
包丁は毎朝研ぐ。シャリは回転ごとに炊く。守るべきことを、守り続ける。それを一心と呼んでいる。
おまかせ 33,000円税・サービス料込
献立は、その朝の豊洲で決まる。これは、ある夏の日の流れ。同じ夜は、二度とない。
先付 SAKIZUKE
秋田のじゅん菜に、淡路の紫雲丹。出汁のジュレを薄くまとわせる。夏の始まりを告げる、冷たい一皿。
椀 OWAN
淡路の鱧。骨切りは一寸に二十六筋。梅肉をひと刷毛、青柚子の香りをひとしずく。椀の湯気で、店の空気が変わる。
向付 MUKOZUKE
この日は真子鰈、三日目。昆布は当てず、塩と酢橘だけ。力のある魚に、余計な仕事はしない。
焼物 YAKIMONO
対馬ののどぐろ。皮目だけを強火で炙る。脂は、火が仕上げる。皿に残るのは、香りだけでいい。
強肴 SHIIZAKANA
房総の黒鮑を、四時間。肝のソースには何も足さない。足す理由が、見つからない。
酢の物 SUNOMONO
柔らかく煮た水蛸に、胡瓜と土佐酢のジュレ。ここで一度、舌を戻す。握りの前の、静かな間。
握り NIGIRI
小鰭、赤身の漬け、中とろ、車海老、墨烏賊、穴子——。シャリは人肌、赤酢二種。一貫ずつ、目の前で。
玉子 TAMAGO
二日かけて仕込む、締めの甘み。カステラのようで、カステラではない。江戸前の玉子。
留椀 TOMEWAN
江戸前の名残を、椀でもう一度。口に残る赤酢の余韻を、静かに流す。
水菓子 MIZUGASHI
その日の果実を、ひとつだけ。静かに終わる。余韻は、帰り道まで。
人肌より、わずかに温かく。赤酢二種と塩だけで仕立てる。魚の温度に、飯の温度を合わせる。回転ごとに炊き、余れば捨てる。
締める、寝かせる、漬ける。魚ごとに時間を変える。真子鰈は三日、小鰭は塩と酢で一晩。旨味が立つ一瞬を、逃さない。
毎朝五時、大将自ら市場に立つ。仲買との付き合いは二十年を超えた。よい魚がなければ、その品は出さない。それだけの約束。
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